ボディサイズがひと回り以上大きくなっただけでなく、「シンプル・イズ・ベスト」を極めたスタイルも、今のトレンドを強く意識したMPV(マルチパーパスビークル)的なものへと大きく様変わり。しかも03年ジュネーブショーで公開されたコンセプトカーの名称は「ジンゴ(Gingo)」だったのだから、登場当初は「これがあの名車の2代目!?」と、熱烈なパンダファンを中心に疑問や反発の声が上がったのは事実だ。
でも、「ジウジアーロの最高傑作」とも評される初代パンダが登場したのは1980年。20年以上の歳月を経ての世代交代なのだから、むしろ変わっているのが当たり前。
加えて、2代目投入までのあいだにフィアットは苦い経験もした。126やパンダの後継車として欧州市場に投入したチンクエチェント(91年)やセイチェント(98年)の業績があまり振るわなかったのだ。つまり、これまでと違う一手が求められていたのはたしかなこと。2代目パンダが新しいコンセプトで登場したことは、現代に求められるスモールカーの姿を、フィアットが真剣に見つめ直した結果と言っていい。
そこで改めてパンダのスタイルを見れば……。ベルトラインを低く設定し、大きなガラスエリアを確保したパッケージには、現行ムルティプラとの多くの共通項を見い出すことができる。1535o(ルーフレール付きは1570o)の車高も、欧州スモールとしては高めの設定だ。ねらいはズバリ、クラスを超えたユーティリティの追求にある。
そして、ドアも先代から2枚増えて5ドアになった。ミニバンやハイトワゴンが全盛の日本に暮らしていると「それがどうしたの」という感覚だが、AセグメントやサブBセグメントに属する欧州スモールは今も3ドアが圧倒的な多数派なのだ。そのなかにあって、暮らしに豊かさや便利さをもたらす多用途性や、大型ガラスルーフ(スカイドーム)に代表される遊び心を盛り込んだパンダの存在感はやはり際立っている。
しかも、キャビンのムードも、肝心要の乗り味も、初代を彷彿とさせる癒し系の部類。「これがパンダ!?」という当初の違和感は、つき合いが深まるほどにほんわかしたムードに中和されていき、自然と「これはやっぱりパンダ」の思いに変わっていくから不思議だ。フィアットの話題は500に独占されている印象だが、パンダの存在も忘れてはいけない。
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