「21世紀に間に合いました」は、初代プリウスの名フレーズだが、それをダイムラーに置き換えればスマート。このふたつのモデルが、97年に出現したのは偶然ではない。世紀末の混沌の中、「来るべき新世紀に必要なクルマは何だ」と真剣に考えた結果、生まれてきたのがこうしたまったく新種の自動車だったのだ。
スマートが挑んだのは、自動車の増殖や大型化がもたらした渋滞、駐車場不足、大気汚染、CO2問題などの危機。驚異のコンパクト化で、それらの問題にスマートな解決法を示したのがSmartというクルマだ。1台のクルマの乗車人数は平均1.2人というデータもあるほどで、ミニマリズムの観点に基づけば「2人乗りで十分」ということになる。
もちろん、スマート以前にもシティコミューターとして開発されたマイクロコンパクトカーは存在した。でも、ほとんどはゴルフカートやスクーターに近い設計やつくり。安全性や快適性はあきらめの対象だった。そこに大きなくさびを打ち込んだのがスマート。トリディオンセーフティセルという独自のボディ構造を開発することで、大きなクルマと同等のパッシブセーフティを確保することに成功し、「ダイムラーが手がければここまでできるのか!」と、
世界のメーカーを驚嘆させた。
全長2560o×全幅1515oのコンパクトネスだけでなく、原案の「スウォッチカー」から継承したファッショナブルな内外装も話題の的。当初の販売は計画どおりにいかなかったが、時代が後からついてくるカタチでスマートの思想と意義は理解され、ダイムラーにとって欠かせないブランドのひとつに成長していった。
で、08年に日本でも供給を開始した2代目へと話は続く。全長2720o×全幅1560o とボディが少し成長したのは、アメリカ市場に進出したのが大きな理由のひとつ。後面衝突50マイル(約80q/h)という厳しい安全基準を満たすには、全長拡大が不可欠だった。また、ホイールベース(55o)、トレッド(前10/後30o)や全幅の拡大により、操縦安定性や側面衝突の対応力が引き上げられた点も見逃せない。
とはいえ、いまだ軽自動車より70p近くも短く、フツーのクルマとはケタ違いの機動力を発揮。最小回転半径は4.1から4.2mになったが、わずかな隙間に縦列駐車を決められる強みはほぼそのままだ。1台分の駐車スペースに、スマートともう1台を収められるケースも少なくはない。スマートを手に入れた日から、「クルマ生活がガラリと変わった」、「より便利かつスマートな毎日を楽しんでいる」と証言するオーナーが多い。
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