車名の由来は、言うまでもなく20世紀を代表する天才芸術家のパブロ・ピカソ。クサラ・ピカソと名乗っていた先代の時代から、シトロエンのコンパクトMPV(マルチパーパスビークル)は個性的なスタイルで注目を集める存在だった。
でも、クサラは2列5人乗りのみのラインアップ。ミニバンといえば3列シート車がポピュラーな日本市場では、ニーズとのズレがあった。
ところが、06年のパリショーでベールを脱いだC4ピカソは、2列5人乗りと、長めのボディに3列7人乗りシートをレイアウトした「グランドC4ピカソ」の2本立て。日本には「グランド」が導入されることになり、ズレが解消されたわけだ。
しかも、造形の芸術性も一段と進化。モノフォルムの美しいスタイルは、ありとあらゆるミニバンがそろう日本でも、異彩を放つ存在だ。白眉は大きくルーフにまわり込む特大のフロントスクリーンで、前席に座ると、まるでグラスキャノピーの中にいるような錯覚を起こしてしまう。
加えて、現行型はパノラミックガラスルーフも標準だから、2列目、3列目でも抜けるような開放感が味わえる。「家族の幸せな時間」を育むMPVとして、これは特大のセールスポイント。シートに腰を下ろして上を見上げた瞬間に、「すっごく居心地がいい!」と、C4ピカソに惚れ込む家族が多いのはそのためだ。
が、心地よさの秘密はそれだけではない。土台はC4や307(308も基本は同じ)など、PSAのCセグメントモデルと共通だが、C4ピカソだけに特別なメカが与えられている。それは、エクスクルーシブ(現在はこれのみの設定)に採用のリヤエアサスペンションだ。
多人数乗車のMPVで操縦安定性のレベルを高めようとすると、どうしてもリヤサスをハードめにセットする方向になるが、エアサスならば心配は無用。必要なときにだけばね定数を高め、多人数乗車や積載の際にも一定の車高を保つことが可能だから、無理に固める必要がない。
まるで、シトロエン伝統のハイドロニューマチックを思わせる、路上を滑るような心地いい乗り心地は、クラス唯一の高度なサスが生み出しているものなのだ。C4ピカソが、個性的スタイルだけをウリにするMPVではないことが、これでおわかりのはず。さらに09年の改良では、新世代1.6L直噴ターボの投入により動力性能のレベルも向上。魅力をより高めることに成功している。
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