06年パリショーの出品を前に、ベルリンにある空港内の特設会場で報道陣にお披露目されたデザインスタディが、名車復活のプロローグ。美しいショーカーの名は「iroc(アイロック)」で、Sciroccoの前後4文字を省いた意味深な車名がなくても、姿形をパッと見ただけで、だれもがすぐに「シロッコの後継車だ!」とわかる仕上がりだった。
そして3代目シロッコは、08年に欧州、09年には日本でも正式にリリース。コラード時代を含めてもVWのスポーツクーペの復活は13年ぶりのことだったのだから、ファンが歓喜したのはいうまでもない。
3代目をプロデュースしたのは、かつてアルファロメオで数々の名作を生んだワルター・デ・シルバだが、歴史を重んじるのが欧州の文化。巨匠ジウジアーロがデザインした初代シロッコ(累積50万台以上の販売実績を持つ)にオマージュを捧げるように、デザインやカラーに伝統を反映したのが目を引くところだ。
だが、ファストバックだったスタイルは、ロングルーフと垂直に近いテールゲートで構成される現代的フォルムへと変身。大胆に張り出したリヤフェンダーと、後方に向かって強く絞り込まれたキャビンが織りなす造形はじつにセクシーで、21世紀のクーペらしい新鮮さをアピールする。また、低重心とワイドトレッドが生む冴えたフットワークも新生シロッコの魅力のカギを握っている。
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