07年のフランクフルトショーで「308RCZ」が公開されたとき、話題が集中したのは大胆な造形。ダブルバブル形状のルーフやリヤウインドウ、アルミで仕立てたアーチ形状のキャビン側面、大きく隆起した前後フェンダーを特徴とするミッドシップ風のフォルムは、いわゆるデザインスタディのように見えた。
しかし、プジョーは本気だった。RCZとして量産型を送り出したのは2年後のことだが、その姿は「ショーモデルそのまま」と言っていい出来映え。安易な妥協や、コストダウンのための変更を突っぱね、初志貫徹した開発姿勢は拍手ものだ。
そうしたこだわりが結晶するスタイルは、言うまでもなくRCZの最大の武器。アウディTTをターゲットとして開発されたモデルだが、こと目立ち度に関しては、ドイツ製ライバルもたじたじといった印象だ。
ちなみに、2610oのホイールベースと1.6L直噴ターボを核とする横置きFFのパワートレーンが物語るように、母体となったのは308。だが、トレッドを大幅に拡大するなどして、シャシーをRCZ専用に仕立てた点は注目に値する。308系列にはクーペ・カブリオレのCCも存在するが、母体が同じであることを想像させないほど、イメージはきっちり差別化されている。
近年のプジョーデザインの集大成と言えるRCZは、見る者を虜にする魔力を備えた傑作と言っていい。
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