第6世代となる現行5シリーズの登場は、ちょっとイレギュラーなもの。まず、新コンセプトを体現した5ドアのグランツーリスモ(GT)がリリースされ、半年ほど遅れて主役のセダンが投入されたのだ。
そのコードネームはF10。いわゆる「バングル・デザイン」の先代E60は前衛的スタイルを特徴とするが、F10は伝統のBMWデザインへの回帰を選択した。わかりやすいのは、ドアハンドルの高さで前後を貫くキャラクターライン。長いホイールベース、流麗なルーフラインとの合わせ技で、均整の取れた美しいプロポーションを形成している。
世代交代に伴い、ホイールベースが60mm、前後トレッドが40mmほど拡大され、全長や全幅も少し大きくなったが、その目的はシャシーの能力アップや居住空間の拡大にある。高張力鋼板の使用部位を拡大し、アルミ製ドアパネルを採用することで、ボディ構造も大きく進化した。
そしてシャシー。E60時代からハイテクの導入に積極的だったが、F10ではついにパワーステアリングの電動化を図り、前後統合制御のインテグレーテッド・アクティブステアリングを新たにメニューに加えた。なかでも目を引くのは4輪アクティブステア。約60km/hを境として、後輪を低速では逆位相、中高速では同位相に操舵するもので、日常の小まわり性と高速スタビリティという相反する要件を、ともにレベルアップするキーアイテムとなっている。
なら、「エンジン屋」として知られるBMWが誇る心臓はどう変わったのか?デビュー当初は自然吸気直6を積む528i(3L)や523i(2.5L)を設定していたが、上級の535i(3L直6)や550i(4.4L V8)ははじめから直噴ターボで、11年には528iや523iも直噴ターボ(2L直4)へとスイッチした。そこにアクティブハイブリッド5や、クリーンディーゼル搭載の523dも加えて、新世代のエコなエンジン群を完成させている。
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