往年の名車「02(マルニ)」と共演するCMでも話題をまく2シリーズクーペは、多くのファンがご存じのように1シリーズクーペの後継モデル。セダン系は奇数、クーペ系は偶数というのが新しいBMWのネーミングの法則で、それに従って2シリーズが誕生したというわけだ。
コードネームはF22。そこからもわかるように母体はF20.1シリーズで、2690mmのホイールベースは共通。しかし、単に3ボックス・クーペ化を図るだけでなく、精悍なマスクを特徴とする独自のノーズデザインを与えたため、パッと見の印象から1シリーズよりも格上のモデルに見える。「3」と「4」以上に差別化は明瞭なものだ。
また、ズングリした印象だった1シリーズクーペと比べて、スタイルが伸びやかに、エレガントになったのも目を引くところ。コンパクトボディ+FRレイアウトという成り立ちは、それだけでも貴重な才能だが、「美しさ」という魅力を加えることで一段と輝きを増したと言える。
そんな2シリーズクーペの導入モデルとなったのは、220iとM235i。まず注目は220iの心臓で、120iが1.6Lの直噴ターボを積むのに対して、こちらには320iなどで好評の2Lの直噴ターボを与えている。近年のBMWの車名とエンジンの関係は、ますます複雑怪奇になってきた感じだ。
ちなみに、エンジン性能は1.6Lの120iが170馬力/25.5kgm、2Lの220iが184馬力/27.5kgm。2L版は上級の320iとのコンビでも「十分以上」と評価されているのだから、220iにクーペらしいスポーティな走りを期待する人にも満足を約束する。
また、自然吸気2Lを積む旧120iクーペに比較の対象を変えれば、エンジン性能は14馬力/6.1kgm強化され、JC08モード燃費値は13.4から16.7km/Lへと改善。フィーリング面では自然吸気の魅力は捨てがたいが、性能と効率におけるターボ化の恩恵は明らかだ。
では、BMW M社が専用チューンを施したM235iの出来はどうだろう?3L直6の直噴ターボは、435iなどに積まれる標準仕様に20馬力と5.1kgmを上乗せし、326馬力/45.9kgmを発生するが、パフォーマンスは感動的なレベルにまで達している。「スポーツ」または「スポーツプラス」にセットしたときの応答性は鋭敏で、刺激的なパワー感と興奮を誘うサウンドを提供してくれるから、「M」の走りの世界につい引き込まれてしまう。
もちろん、BMW M社が手がけたモデルなのだから、シャシーもバッチリ決まっている。前後異サイズの18インチタイヤと、電制ダンパーを使うアダプティブMサスペンションのコンビネーションは素晴らしく、理想に近い前後重量配分や高いボディ剛性とあいまって、きわめて正確なハンドリングを実現している。
コンパクトなボディサイズもM235iの才能で、タイトな峠道ではまさに水を得た魚のよう。ホットな走りを楽しんでいるとき、頭の中に浮かんできたのは……E46、E36時代のM3クーペの姿。性能、価格、楽しさの観点から見て、かつてのM3のポジションを受け継ぐ存在だ。
付け加えておくなら、前4ピストン/後2ピストンの強化型ブレーキはハードな使用でも音を上げず、電制サスは日常ユースでも十分快適な乗り心地を提供してくれる。ということで、エレガントなクーペライフを求める人には220i、本気の走りを満喫したい人にはM235iがお薦め。どちらも完成度は高い。
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