日本での販売が150台に限定される特別なモデルだけに、RCZ Rのモディファイはかなりエッジが効いたもの。白眉と言えるのはエンジンで、1.6Lの排気量をそのままに性能を200馬力/28.0kgm(MT用)から270馬力/33.7kgmへとジャンプアップさせた。2000回転を超えたところで「キターッ」とばかりにトルクを炸裂させ、6500回転オーバーまで一気呵成に吹け上がるのが、R専用ユニットの快感のツボだ。速さに加えて、抜けのいい排気音の演出効果も高く、「ホントに1.6L !?」と驚くほどの刺激性を生み出している。
そして、シャシーチューンも決まっている。回頭性がシャープなだけでなく、曲率がきついコーナーもグイグイと曲がってくれるのがうれしいところ。トルセンLSDのおかげで立ち上がりのトラクションも優秀だから、ターボパワーをきちんと速さに昇華できるというわけだ。で、締めくくるのは強力なブレーキ。Rには「走る・曲がる・止まる」の三拍子が揃う。RCZというと、308ベースのスペシャルティとなめてかかる人もいるだろうが、Rは本格スポーツを指向する。
でも、あまりにスポーツ性の高さを強調すると、日常の扱いやすさを心配する声も聞こえてきそう。しかしながら、心臓は「リッター170馬力」のハイチューンから連想する神経質さとは無縁で、過度のターボラグやトルクの段つきに悩まされることはまずない。加えて、サスもガチガチではなく、日常性にも配慮したセッティングだから、ユーザーや用途を限定しないのだ。ネックとなるのは540万円というプライスだが、プジョーのモータースポーツ部門である「PEUGEOT SPORT」が、魂を込めて開発をした逸品と考えれば納得がいく。専用のリヤスポやツインエキゾーストが目を引くルックスも、魅力的な仕上がりだ。
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