GM再建の際に欧州部門から切り離されたサーブは、ブランド消滅の危機に瀕していた。だが、オランダ・スパイカーの傘下でリスタートが切られることになり、新たな胎動が始まっている。
オールニューのモデルは新型9-5からで、9-3は従来型のリニューアル版だが、目を引く進化点も少なくない。とくに、スポーツエステートをベースとして、流行りのクロスオーバーに仕立てた9-3Xは、大きな注目を集める存在だ。この“X”は、ロードクリアランスを35mm高め、ルーフレールを装着するとともに、フェンダーアーチ、サイドシル、バンパーにブラッ
クのパネルをプラスして、SUVテイストを演出している。
というと、「なんちゃってクロスオーバー!?」と疑う人もいるだろうが、駆動方式もサーブ初の4駆へと変更されているのだ。しかも、新開発のXWD(クロスホイールドライブ)は前後に加えて、後輪左右間の駆動トルク配分も電制LSDにより緻密に可変制御する高度なメカ。オンデマンド式としては、その能力はトップレベルと言っていい。
そんなXWDの実力は試せなかったが、オンロードでの高い能力は確認することができた。光るのは、操舵に正確に反応するリニアなハンドリングと、4駆ならではの高度な安定感だ。車高を高くしたネガは感じられず、高速域やハードコーナリングにおいても、高いレベルでスポーティさと安心感をバランスさせている。操舵力は低速から重く、低速での乗り心地はハードめだが、骨太な走り味を好むサーブファンも多いと思う。
また、6速ATの導入で磨きがかかった動力性能にも注目。ターボは低速からラグなく立ち上がり、中高速域では力強い加速とスポーティなサウンドを楽しませてくれる。9-3Xに乗ると、「新生サーブ」が目指す方向がクッキリと見えてくる。
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