新車試乗レポート
更新日:2018.11.18 / 掲載日:2015.04.16

マセラティ ギブリ 試乗レポート

マセラティ ギブリ

イタリアの名門スポーツブランドは、拡大戦略を繰り広げている。年々、販売台数を増加させるマセラティにとってさらなるジャンプの「カギ」となるのが、より手軽な「ギブリ」の存在だ。

新しいマセラティが示す非ドイツブランドの可能性

 デフレ期は、「昨日よりも明日のほうが貧乏になってしまうかもしれない」という心理が働き、買い物で間違いをしたくなくなる。ようは定番商品に人気が集中しがちになるわけだが、景気状況が一転して適度で好ましいインフレになれば、今度はお金の価値がモノに対して相対的に落ちることになるので、買い物が積極的になり、冒険するようになる。最近の日本で輸入車が意外なほど好調な売れ行きを示しているのもそうと推測できるが、もう少し細かく考えれば、日本における輸入車の定番たるドイツ車以外のブランドにチャンスが訪れたと言ってもいい。

 そんな折、ギブリがマセラティとしては身近に感じられる価格で表れたのは非常にタイムリーだ。従来のマセラティは1500万~2000万円の価格帯だったが、ギブリはメルセデス・ベンツEクラスやBMW5シリーズと同様のクラスで素のモデルなら895万円、ギブリSが1016万円、ギブリS Q4が1095万円。ドイツ車以外に浮気したくなったひとやずっとマセラティに憧れを抱いていたひとにとって大いに気になるはずだ。マセラティは昨年100周年を迎え、一度は落ち込んでいた販売台数を飛躍的に伸ばそうという計画を持っており、ここ数年は順調に伸びてきている。2012年は6307台、2013年は1万5400台、2014年は3万6500台。いずれも史上最高だが、2015年には5万台をねらうという目標も現実的になってきた。

 ギブリのエンジンはいずれもV6の3L直噴ターボだが、モデルによってパワーは異なる。ギブリは最高出力330馬力/最大トルク51kg m、ギブリSおよびギブリS Q4は410馬力/56.1kg m。両者の違いはカムシャフトにインジェクタ、ターボマッピング、電子制御システムなど。素のモデルでもドイツ軍団などに比べるとハイチューンであり、エンジンの性能ではどこにも負けたくないというイタリア車の伝統的なスピリットが見て取れる。

マセラティ ギブリ

 クワトロポルテのV8などに比べれば、コクピットで聞く音は控えめに思えるが、ビジネスユースを含めた日常性を考えればちょうどいいレベル。シフトレバーをDレンジから横に移動させてSレンジにすればエキゾーストのバイパスバルブが開いて抜けがよくなり、とたんに官能性を増すあたりは、さすがマセラティ。ジキルとハイド的な豹変ぶりを見せるのだ。高音域でむせびなくような音色ではなく、低音域が強調された迫力あるサウンドだ。素とSの差は、低・中回転を多用する実用域ではそれほど大きくはなく、高回転まで回したときにSのほうがパワーの盛り上がりが鋭く興奮度が高い。

 だがエンジンだけがギブリの魅力ではない。シャシーの実力が驚くほどに高いのだ。以前のクワトロポルテのようにトランスアクスルではなく、ZF製の8速トルコンATだが、FRモデルでは前後重量配分が50対50。これがノーズの入りの素直さ、コーナリング中の前後バランスのよさなど根本的な資質の高さとなり、シャープなハンドリングを実現している。全モデルでアクティブ・スカイフックサスペンションという電子制御可変ダンパーを選べるが、なくても不満はない。乗り心地のよさとスポーティさのバランスのレベルが高くなるといった感じだ。

 各部のクオリティも高く、ドイツ車から乗り換えても違和感はないだろう。それでいて官能性では一歩も二歩も上。熱い心を持つドライバーのビジネスエキスプレスとして理想的なモデルといえる。

文●石井昌道 写真●内藤敬仁、北川 泉
問い合わせ マセラティ コールセンター TEL:0120-965-120

Detail Check

マセラティ ギブリ

  • コックピット

    マセラティ ギブリ(コックピット)

  • コックピット

    上質なスポーティが表現されているインパネ。最新モデルながら、随所に伝統を感じさせるデザインが心憎い。

  • インテリア

    マセラティ ギブリ(インテリア)

  • インテリア

    マセラティらしさの重要な要素である豪華で優美なインテリアも忘れられていない。レザーシートは標準だが、名門ボルトローナ フラウ社製も選べる。

  • ラゲッジスペース

    マセラティ ギブリ(ラゲッジスペース)

  • ラゲッジスペース

    500Lの容量を誇るラゲッジルームは、使い勝手がよく、頼もしい。後席は6対4可倒で、長尺物にも対応する。実用性も侮れない。

  • エンジン

    マセラティ ギブリ(エンジン)

  • エンジン

    V6ツインターボから生まれる330馬力のパワーは、このエレガントなボディを260km/h以上の高速へと加速させる。

主要諸元:マセラティ ギブリ(8速AT)

全長×全幅×全高4970×1945×1485mm
ホイールベース3000mm
トレッド前/後1635/1655mm
車両重量1950kg
エンジンV6DOHCターボ
総排気量2979cc
最高出力330ps/4750rpm
最大トルク51.0kg m/1600rpm
サスペンション前/後ダブルウィッシュボーン/5リンク
ブレーキ前後Vディスク
タイヤサイズ前・後235/50R18・275/45R18

全国メーカー希望小売価格(発売 2013年12月)

ギブリ(8速AT)895万円
ギブリS(8速AT)1016万円
ギブリS Q4(8速AT)1095万円

Body Color

 ネロ □ビアンコ グリジオ グリジオ メタッロ ブロンゾ シエナ
 シャンペン グリジオ マラテア ※ほか6色。

伝統を守りながらも進化する美しいマセラティ・デザイン

  • マセラティ ギブリ

  •  100年の歴史を誇る情熱のプレミアムスポーツブランドは、新たなデザイン、ブランドイメージを掲げ、見事な復活劇を演じている。しかし、ギブリの低く美しい、そしてダイナミックなフォルムからは、往年のマセラティが一貫して追い求めてきた、レースや走りへの熱い思いが伝わってくる。

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グーネットマガジン編集部

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