新車試乗レポート
更新日:2018.11.11 / 掲載日:2016.04.21

メルセデス・ベンツ Vクラス 試乗レポート

メルセデス・ベンツ Vクラス

メルセデス・ベンツミニバン「Vクラス」がフルモデルチェンジされ、ミニバン王国に自信満々で登場してきた。日本向けに搭載されたというクリーンディーゼルと洗練された走りが光る注目モデルだ。

ミニバン王国に挑むメルセデスの意欲作

 2015年には輸入車販売台数ナンバー1の座を射止め、波に乗るメルセデス・ベンツが、さらなるシェア増をかなえるんじゃないかと期待しているのが新型Vクラスだ。日本はミニバン王国で地元メーカーの実力が高いため、これまでは欧州メーカーが入り込む余地は少なかったが、新型Vクラスは日本のミニバンを研究して同社の乗用車と同様のインテリアや利便性を持つようになり、車両価格は535万~730万円。平均で約450万円、最高級で650万~700万円ほどのトヨタアルファードヴェルファイアが約10万台/年も売れていることを考えれば、そのシェアのほんの一部でも奪えれば輸入車としては大きな成功になるだろう。

 新型Vクラスの武器は全モデルがクリーン・ディーゼルを採用することだ。低回転から大トルクを発生するディーゼルの特性は、大きくて重いクルマほどメリットとなるので2t級の大型ミニバンにはぴったりだが、日本メーカーにその用意はない。Vクラス用のユニットはC220dと同様のものだが、本国には高価な250dか、ブルーテックではない220CDIしか設定がなかったので日本市場向けに専用で用意されたという。2.2Lの排気量で最高出力は163馬力と平凡ながら、最大トルクは38.7kg mと強大だ。

 実際に走らせてみるとスペック以上に頼もしく感じられる。日本の大型ミニバンもV6の3.5Lならそれなりのトルクがあるが、最大トルク発生回転数は4500回転なのである程度回さないとならないが、Vクラスのディーゼルは1400回転で最大トルクに達するので走り出した瞬間からグイグイとボディの重さを感じさせずに押し出していく。普通に交通の流れにのるぐらいのペースなら2000回転あたりでシフトアップしていき100km/h前後の巡航も1000回転台で楽々こなす。この頼もしさは余裕に繋がり、長く運転していても疲れない。

メルセデス・ベンツ Vクラス

 高速道路でのシャシー性能も日本のミニバンとは異なる。ボディは大きな金庫かと思うほどガシッとしていて抜群の安定感を伴いながら突っ走っていく。ステアリングから伝わってくるフィールもさすがはメルセデスで、直進が安楽に行えつつ、レーンチェンジなどでは遅れのないリニアな操縦感覚。ミニバンであることを忘れさせるシャシーなのだ。

 ドライバーとして嬉しいのは、VクラスにもメルセデスのFRらしい小まわり性能があること。最小回転半径は5.6mと小さく、360度カメラシステムなど装備も充実しているので、大型ミニバンでは躊躇するような狭い路地での取りまわしもいい。

 アルファード/ヴェルファイアに対して、乗り心地としてはやや硬めだが、操縦安定性の高さを知ってしまえば気にならないレベルだろう。ただし、ストップ&ゴーの多い街中ではディーゼルのノイズがやや大きいこと、凸凹の多い路面ではタイヤやサスペンションまわりが発するゴトゴトとした音が少し気になる。都市部でVIPを乗せての移動だと、アルファード/ヴェルファイアのハイブリッドのミニバンの方が適しているかもしれない。また、シートは座り心地が確かでドイツ車らしいが、アレンジのしやすさなどはまだ日本車のほうが上だ。

 とはいえ、デザインやセンスの面ではVクラスのほうが圧倒的に都会的であり、各部の質感なども真のプレミアム・ブランドが仕立てただけの本物感がある。爆発的に売れるとまではいかなくとも、都市部では確実な人気を得ることになりそうだ。

文●石井昌道 写真●GooWORLD
問い合わせ メルセデス・コール TEL:0120-190-610

Detail Check

  • コックピット

    メルセデス・ベンツ Vクラス(コックピット)

  • コックピット

    なだらかな曲線のインパネはすっきりとして洗練されている。センターコンソールに備えられたCOMANDシステムは絶妙な角度に設置され、操作しやすい。視界は広く、見切りも良好だ。

  • インテリア

    メルセデス・ベンツ Vクラス(インテリア)

  • インテリア

    試乗したのは最長モデルということもあり、スペース的なくつろぎ感は圧巻のレベル。シートは3列目であっても座り心地がよく、長距離移動も不安がない。

  • エンジン

    メルセデス・ベンツ Vクラス(エンジン)

  • エンジン

    全グレード共通のディーゼルエンジンは力強く、15.3km/Lの良好な燃費(全グレード)を実現する。

  • ラゲッジスペース

    メルセデス・ベンツ Vクラス(ラゲッジスペース)

  • ラゲッジスペース

    取り外し可能なラゲッジルームセパレーターは、リヤウインドウのみを開けて荷物の出し入れができる。狭い場所で便利だ。

  • 広角カメラ

    メルセデス・ベンツ Vクラス(広角カメラ)

  • 広角カメラ

    フロントグリルと左右ドアミラー、リヤのナンバープレートの4カ所に備えられた広角カメラが、車体の大きさを感じさせない。

  • セレクティブダンピングシステム

    メルセデス・ベンツ Vクラス(セレクティブダンピングシステム)

  • セレクティブダンピングシステム

    走行状況に応じて減衰力を調整するセレクティブダンピングシステムと7速ATが生み出す走りは、爽快かつ上質感があるもの。

主要諸元:V 220d アバンギャルド エクストラロング(7速AT)

全長×全幅×全高5380×1930×1880mm
ホイールベース3430mm
トレッド前/後1665/1645mm
車両重量2490kg
エンジン直4DOHCディーゼルターボ
総排気量2142cc
最高出力163ps/3800rpm
最大トルク38.7kg m/1400-2400rpm
サスペンション前/後ストラット/セミトレーリングアーム
ブレーキ前/後Vディスク/ディスク
タイヤサイズ前後245/45R18

全国メーカー希望小売価格(発売 2015年10月)

V 220d トレンド(7速AT)※受注生産535万円
V 220d(7速AT)620万円
V 220d アバンギャルド ロング(7速AT)695万円
V 220d アバンギャルド エクストラロング(7速AT)730万円

Body Color

 ジュピターレッド □アークティックホワイト カバンサイトブルー
 ブリリアントシルバー フリントグレー オブシディアンブラック
 ※ほか1色。

ボディは長さ違いの3タイプ使い勝手はどれも申し分なし

 じつに3種類の異なるボディサイズをラインアップするあたりは、あらゆる用途にジャストフィットさせようとする考えの表れ。一般ユーザーが選ぶ場合は、使うシチュエーションや車庫の大きさなどから決めることになるだろう。運転のしやすさは最長のエクストラロングでも損なわれないのが嬉しい。

  • V220d トレンド

    V220d トレンド 全長 4905mm

  • V220d アバンギャルド ロング

    V220d アバンギャルド ロング 全長 5150mm

  • V220d アバンギャルド エクストラロング

    V220d アバンギャルド エクストラロング 全長 5380mm

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グーネットマガジン編集部

ライタープロフィール

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1977年の中古車情報誌GOOの創刊以来、中古車関連記事・最新ニュース・人気車の試乗インプレなど様々な記事を制作している、中古車に関してのプロ集団です。
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また、最新情報としてトヨタなどのメーカー発表やBMWなどの海外メーカーのプレス発表を翻訳してお届けします。
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